インドネシア通過流の季節変化




 約2000年と言われる長い時間スケールをもつ海の深層循環は、北大西洋のグリーンランド沖で冷やされて深層に沈み込んだ海水が起原であると考えられています。世界の海に広がった深層の水は非常にゆっくりと上昇し、海面付近の流れに乗って、最終的には北大西洋に戻っていくとされています。これで海水の大循環がひとまわりしたことになります。こうしたイメージは、W. Broeckerの「コンベアベルト」として広く知られています。
 さて、ここで話題のインドネシア通過流とは、太平洋からインドネシア多島海を通ってインド洋に抜ける流れのことで、上述のコンベアベルトの一部を担う流れということで、その実態、変動の様子が注目されている流れです。
 インド洋に放流した漂流ブイは、季節によって異なる動きを示し、北半球の夏にあたる時期には、コンベアベルトのとおりに太平洋からインド洋に流れます(上の図a)が、北半球の冬にあたる時期には、逆にインド洋側からインドネシア多島海側に流れている様子(上の図b)が捉えられました。少なくとも漂流ブイの動きに反映される表面付近の流れは大きな季節変化をしていることが実証されました。

→ Michida and Yoritaka, J.G.R., 101, 12475-12483 (1996) 

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